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NPO法人多様な学びプロジェクトの『フリースクール等への伴走支援』現場レポート2023



 NPO法人多様な学びプロジェクトは、2023年度および2024年度に赤い羽根福祉基金助成事業に採択され、小さな居場所から大きなフリースクールまで様々な不登校支援団体の伴走支援をさせていただいています。


 前回記事『NPO法人多様な学びプロジェクトの『フリースクール等への伴走支援』とは?』に引き続き、今回は伴走支援の現場での様子を知るために、伴走支援者である当団体の副代表の2人(熊谷、前北)に引き続きインタビューしました。


 2人のインタビューに加え、実際に当団体の伴走支援を体験された「特定非営利活動法人マナビダネ(以後、マナビダネ)」の代表 土橋秀子(どばしひでこ)さんにその感想もお聞きしました。


 

▼今回の記事の主な内容


 


伴走支援の流れと伴走の現場で大切にしているところ

(熊谷)「伴走支援は、アンケート、現地視察、1対1のヒアリングやグループミーティングなどを通して団体の課題抽出・課題の見立てを行います」

(前北)「伴走支援者がいなくなった時に、その団体が困らずに自走できるか?成長できるか?ということを、絶えず考えて支援しています」

「スタッフの心に寄り添いながら、伴走支援者が気がかりな事を『問いかける』ことによって、ご本人が気づく機会をつくっています」

 伴走支援は、その団体がその団体らしく成長し続けることができるようになるサポートです。


 団体の中に元々ある『団体のビジョン、教育観、子ども観、大切にしたいこと』を引き出しながら、団体スタッフ自身が課題を把握し解決していけるような気づきが生まれる『問いかけ』をしていきます。『気づく』体験をすることで、伴走支援が終了した後も自発的に行動し、その団体らしく成長し続けることが可能になります。


団体の内部コミュニケーションの重要性

(前北)「問いかけをしていく中で、当初その団体が思っていたニーズと真のニーズが違ってくることもあります。私たちがフリースクール等を伴走支援していく中で、内部コミュニケーションの重要性に気づく場面が多々ありました」

(熊谷)「内部コミュニケーションの中の『マインド合わせ』は重要です。意思疎通がうまくいかないことで、時には団体運営がうまく立ち行かなくなる原因にもなりえます」

【マインド合わせの有効性】

・スタッフ同士の意思疎通がスムーズになり、業務が効率的になる

・相手が受け止められる言葉で伝えることができる

・話し合いの場が整い、心理的安全性が高まる

 団体運営の要となる、円滑な内部コミュニケーションを創発できるように、ディスカッションの場を設けたり、組織再編成の提案をしたりしてきました。その団体の課題の水脈を探るように問いかけを続けながら、団体が在りたい形を共に模索していきました。

その団体らしく自発的に成長していけるように

(前北)「私が外部から支援する団体に入る時には『私はこういう人間です』という自己開示をします。そして『あなたはどのような人ですか?』と問いかけます」

その人がやりたい事、やりたくない事、目指している事などその人となりを知り合いながら関係性をつくっていきます。

(前北)「私はその団体の良さを大切にしたいと思っています。担当したNPO法人キーデザインのフリースクールミズタマリ(以後、ミズタマリ)は、代表の土橋優平さんの『熱い思いを応援したい!』 という人たちが集まってくる。代表の熱い思いをみんなで共有していく。そんなミズタマリの良さを活かした組織運営ができないかと考えながら伴走支援をしました」

(熊谷)「マナビダネに関しては、代表が団体を立ち上げた熱い思いと、団体として目指していることを改めて全体に伝える場を設けたりしました。その熱い思いから広がる代表の人脈の広さもマナビダネの特長です」

団体のビジョンを定期的に団体全体へ伝え続けて、スタッフが団体の方向性を理解しながら前向きに進んで行けるように取り組みました。


 


■特定非営利活動法人マナビダネ 代表 土橋秀子(どばしひでこ)さんのインタビュー

実際に伴走支援を受けられたマナビダネの代表土橋さんにインタビューしました。


特定非営利法人マナビダネ 代表 土橋秀子さん

「マナビダネ」について

埼玉県入間市のフリースクール。 楽しい!という体験から、学びのタネを探しませんか? 『体験から学ぶ・人との関わりから学ぶ・自発的に学ぶ』を柱に、主体的な学びにつながる体験作りを目指して活動しています。 社会参加に必要な力を育む方法を、お子さんと保護者の方と模索しています。

【質問】伴走支援の感想とその後のマナビダネの様子はどうですか?

(土橋代表)「伴走支援という客観的な第三者が入ることで、スタッフの関係性が整うことがありました。1年に1回くらい外部の人が入って研修することが、適切な組織運営に必要だと思うようになりました」

「自分には見れていないものが、外部の人との関わりから客観視できるようになったり、課題を指摘してもらえたことなどが財産になりました」

(土橋代表)「相手に伝えているつもりでも、伝わらないことはあると思います。おもんばかるより、きちっと言った方がいいと思っているのですが、相手の受け取りやすい話し方をより意識するようになりました」

「個々のスタッフに適した伝え方、耳を傾けやすい状況や言葉選びなどの工夫を模索しています」



【質問】伴走支援後、子ども達の変化はありましたか?

(土橋代表)「フリースクールの場が安定することが、子どもにとっての安心安全に繋がります。伴走支援のおかげで大人にとっての安心安全を作ることができ、間接的に子ども達にも影響があったのではないかなと思います」


特定非営利法人マナビダネ 活動風景

【質問】マナビダネがこれから取り組みたいことは?

(土橋代表)「第三者の力を借りて組織運営の講座で学びながら、団体の共通言語をつくっていきたい。『当たり前』のすり合わせが必要。やっぱりスタッフ一人一人バックグラウンドが違うので、 当然『子どもってこういうもの』みたいな価値観(子ども観)がそれぞれちょっとずつ違う。安心安全にしても、Aさんの思っているものとBさんの思っているものがもしかしたら違うかもしれない。だから、子ども観にしても、安心安全の場所にしても、うちの団体らしい共通言語をつくっていきたいです」

 自発的に気づき行動できる組織は、刻々と変わる時代や子どもの環境に対応して成長できる組織です。団体全体のために多様な個性を理解して配慮していきたいという代表の思い。個性を認め合える心理的安全性のある組織は、子どもにとっての心理的安全性にも繋がっていきます。


特定非営利法人マナビダネ 活動風景

伴走支援のチーム力

 「フリースクールの運営は前例が少ないから、他の団体の皆さんは本当によくやっているなと思う」とマナビダネ代表土橋さん。明るく前向きな土橋さんでもその運営の難しさを感じていらっしゃいます。日本でのフリースクール等の歴史は浅く、前例が少ないため運営は手探りな部分が多いです。全国にそのような難しさに直面しているフリースクール等は多く、NPO法人多様な学びプロジェクトはそのような団体を伴走支援します。


 当団体は、担当者1人だけではなく、経験豊かなチームで多角的にサポートしています。


 伴走支援者である熊谷と前北は、右脳と左脳のような役割分担で感情面とロジカル面で総合的に団体運営できるように協力して伴走しています。さらに、伴走支援者を伴走支援する存在もあり、より客観的に団体としての自走力を上げるアドバイスをすることができます。


 伴走支援の事業評価もしており、客観的な指標に照らし合わせながら、適切な支援ができているかどうかの把握も多角的に行っています。

 その団体のゴールはさまざま。その団体が進みたい道を『伴走支援チーム』の力で共に探ります。その団体に今何が必要で、どうしたら自分たち自身で団体の未来を切り開いていけるのか?『問いかけ』の力や客観的な見立てでその団体と共に考えていきたいと思っています。

(記事:奥田)


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